好きな映画を聞かれると

「特にない」と答え続けてきた人生だった。

 

映画をよく見る方ではないが、一人暮らししてから映画館に足を運ぶことは多くなったし、TSUTAYAで映画を借りて見ることもかなり増えた。

 

面白かったと思う映画はあった。

でも、思い出しては余韻に浸れるような映画がなかったのだ。

 

一昨日の午前中までは。

 

響け!ユーフォニアム 〜誓いのフィナーレ〜」にこんなにも心を打たれ、人生を見つめ直すきっかけになるなんて思わなかった。

 

元々大好きなアニメシリーズで、それこそ「好きなアニメは?」と聞かれたら答える作品のうちのひとつではあった。

 

今回の映画も楽しみにはもちろんしていたが、見る前までは「わーいユーフォの新作だ〜」くらいにしか思っていなかった。

 

劇場を出た直後、鼻をすすりながら、ほぼ本能的に売店へパンフレットを買いに行っていた。

しかし、その時もまだ、あのシーン良かった〜と余韻に浸り、思い出し泣きをしていたくらいの、よくある「良い映画を見た後」だった。

 

しかし、家に帰って改めて映画を思い出しながら、私は自分の将来を真剣に考えていた。

 

「全国大会金賞」を見つめて吹奏楽に取り組む彼女達とは10くらい年が違うけど、そんな私でもまだ夢を見れるんじゃないか。

小さな一歩から出来ることがあるんじゃないか。

 

アニメ映画なんかで、と思われるかもしれないが、そのアニメと同じように部活に真剣に取り組む高校生や中学生は、実際にこの世に存在する。

 

私は、今まで真剣に全力で何かに取り組んだことがあっただろうか。

 

部活には入っていたが、大会などなかったし、同じ趣味の人を学校で見つけるために入っていたようなものだった。

 

麗奈はアニメ本編でも言っていた。

「生きた証を残したい」

 

私は今みたいな状態で生き続けて、生きた証を残せるような人間になれるのだろうか。

 

そう強く思ったのは、作品そのものだけでなく、そのスタッフロールに友人の名を見つけたのも大きな理由だと思う。

 

学生の頃に、ユーフォ面白いね、ここのシーンが、あの時の描写が、なんて語り合っていた友人の名前が今、作品の公式パンフレットに載っている。

 

以前から話は聞いていて知っていたけれど、改めて目に見える形でそれを実感した。

 

あくまで大勢いるスタッフの中の一人に過ぎないので、それは「生きた証」と言えるほど大きなことではないだろう。

 

でも、あの頃憧れでしかなかったものに自分の力で関わっている友人に、感動し、尊敬し、嫉妬した。

 

私には十分「生きている証」に見えた。

 

私も自分の力で何かを成し遂げたいと、強く感じた。

今の仕事に、現状に、全く納得していないから、尚更。

 

映画を見た次の日、私は「やりたいこと」の準備を少しだけした。

 

やろうと思って今すぐに取り組めることではないのでもどかしさはあるが、仕事に満足していなくとも休暇はとりやすい今の職場にいる間に、やれることをやってみよう。

 

「生きた証」はいきなりハードルが高いかもしれない。

 

まずは、自分に自信を持って、誇りを持って自分を表現できるような。

 

そんな人間を目標に、遅めのスタートを、私は、今。